EV車は安全性が向上しているもの、リチウムイオン電池の特性上、火災リスクがゼロではありません。正しい知識を持ち、安全な運用を心がけることが重要です。
EV車が燃える主な原因
バッテリーの衝撃・破損
- 交通事故でバッテリーが破損した場合、内部ショートが発生し発火する可能性があります。
- バッテリー底面の衝撃(縁石に強く起こるなど)で内部セルが損傷することも危険です。
過充電・過放電
- 充電制御システムの異常により過充電されると、バッテリー内部でガスが発生し、膨張・発火の原因となります。
- バッテリーを何気なく空(過放電)にすると劣化し、内部反応が不安定になります。
高温環境での発火(サーマルランアウェイ)
- 夏の炎天下で長時間放置や、急速充電の連続使用によりバッテリー温度が異常に上がると、内部の電解液が分解し、発火することがある。
- 火事が発生すると、お互いのセルが次第に増える「連鎖燃焼」が発生し、制御が難しくなる。
製造不良・バッテリーの劣化
- バッテリー内部の製造欠陥(セルの繊細なショート)により、使用中に発火するケースもあります。
- 経年劣化したバッテリーは内部の抵抗が増え、発熱しやすくなります。
EV火災の特徴
- 燃え始めると高温・長時間燃える(1,000℃を超えることもある)。
- 水による消火が困難(内部に酸素を含んでいる為、一度燃えると自然に鎮火しない)。
- 消火後も再発火のリスク(バッテリー内部に残った熱が再び引火する「リグニッション(再着火)」が起こります)。
EV火災を防ぐための注意点
事故後はすぐに点検を受ける
- 事故でバッテリーに衝撃があった場合、見た目に異常がなくても専門の整備工場で点検を受ける。
充電管理を正しくする
- 純正の充電器・推奨された充電設備を使用する。
- 長時間の急速充電を避け、充電中の異常発熱に注意する。
高温環境を避ける
- かなり日光が当たる場所での長時間駐車を避ける。
- 充電中や長時間走行後は、車両を冷却する時間を設ける。
車両の定期点検を実施
- メーカー推奨のメンテナンススケジュールに従い、バッテリーの状態をチェックする。
- 劣化したバッテリーは早めに交換する。
EV火災発生時の対応
すぐに避難し、119番通報
- EV火災は大いに燃え広がるため、車内に留まらず、すぐに車から離れる。
- 煙が出ている場合も火災の前兆なので、異変を感じたら安全な場所に避難する。
水での消火は効果が限定的
- 一般の車両火災と違い、バッテリーが発火した場合は水をかけても完全に消火できない。
- 大量の水で冷却し続けることで、燃焼の拡大を防ぐ(消防隊が大量の水をかけるのはこのため)。
消火後も再発火の可能性あり
- EV火災は数時間後に再発火する可能性があるため、消火後も安全な場所に移動し、バッテリー温度を監視する必要がある。
EV車を船舶で輸送する際の対策
EV車の船舶輸送時の火災リスク
EV車のバッテリー火災は「サーマルランアウェイ(熱暴走)」により発生し、一度発火すると高温で燃え続け、再発火のリスクが高いという特徴があります。
火災の引き金の要因
- 船の揺れによるバッテリー損傷(輸送中の振動・衝撃)
- 温度上昇によるバッテリーの熱暴走(密閉空間・高温環境)
- 充電状態が高すぎると発火リスク増加(フル充電状態のバッテリーは不安定)
- 輸送中のショート・内部故障(経年劣化した車両や事故車の輸送)
EV車の船舶輸送時の火災対策
事前チェックと準備
SOC(State of Charge、充電状態)の調整
- バッテリーの充電率を30~50%程度に抑える(フル充電は発火リスクが高まります)。
- 一部の輸送規定ではSOCを50%以下に制限している(IMOガイドライン準拠)。
State of Charge:バッテリーの充電状態や残容量を表す指標
異常がある車両は輸送しない
- 事故車・水車・バッテリー損傷の疑いがある車両は事前に検査し、輸送を避ける。
輸送中のショート防止
- EV車の電源を完全にオフにする(物理的にバッテリーを切断するのが始まる)。
- 配線やバッテリー端子の状態を確認し、必要であれば絶縁処理を行う。
船内での配置・固定
適切な車両確保を確保する
- 車両内のスペースを十分に確保し、密集しすぎないように配置。
- 国際海事機関(IMO)のガイドラインでは可燃物との距離を確保することが推奨されている。
船の揺れ対策(固定)
- 車両をしっかり固定し、輸送中の揺れや衝撃でバッテリーが損傷しませんようにする。
- タイヤ止め・ラッシングベルトを活用し、動かないように固定。
換気監視
- EV車が発火した場合、有毒ガスや大量の煙が発生するため、船倉の換気を強化。
- CO2センサー・ガス検知器を設置し、異常を早期発見できるようにします。
消火・緊急対応の準備
EV火災に対応できる消火設備を準備
- 水だけでは消火できないため、大量の給水利用設備(スプリンクラー・放水システム)を完備。
- リチウムイオン電池専用の消火剤を準備します。
火災警報システムの強化
- サーモカメラ・熱センサーを導入し、バッテリーの異常発熱を監視します。
- CO2・ガス検知器を設置し、発煙を早期に感知する。
EV車火災用の緊急対応マニュアルの整備
- 一般的な車両火災とは異なるため、EV車の火災を想定した消火手順・避難計画を作成します。
- 消火後も再発火のリスクがあるため、冷却作業を長時間続ける(24時間以上のモニタリングが必要)。
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